Q&A:Nadine Chahineが可読性について語る

ウェビナー「一瞬で読み取れる書体をデザイン」で、Monotype英国書体担当ディレクターNadine Chahine博士が、デバイスがいかに私たちの読み方を変えているかについて説明し、可読性を新たな角度で捉えることの大切さについて語りました。ウェビナー後、博士は研究とタイプの可読性にについての質問に回答しました。下記の概要をご参照ください。

可読性という点では、xハイトと文字幅のどちらがより重要ですか。

「xハイト」は(とりわけラテン文字で)オプティカルサイズを作るものですから、明らかにとても重要です。「xハイト」は、文字内にどれだけスペースがあるかを示すものです。「xハイト」をご存じない方のために説明しますが、「xハイト」とは特定の書体での小文字の「X」の大きさのことです。オプティカルサイズとは、目に映る書体の大きさです。文字幅とは、書体の幅です。例えば、コンデンスド (長体) 書体と標準書体を比較してみると分かります。

ですから、今の質問への答えは、どちらも重要ということです。高さだけではなく面積も大切だからです。xハイトが大きな書体の場合、通常これらのカウンター (ふところ) が大きな面積になり、読みやすくなります。コンデンスドデザインかxハイトを低くしてその部分を取り除くと、読みにくくなります。だからこそ、両方の組み合わせが大切なのです。

コンデンスの度合いが大きなデザインの場合は、必ずxハイトを高くする必要があります。xハイトが小さい書体の場合は、文字幅が広いデザインが必要です。「c」、「a」、「b」、「d」、「p」、「q」などのようなベースラインとxハイトの間でぶら下がっている形の文字のカウンターの幅と高さに注意してください。

私は、アメリカでメディケイドやメディケア加入者を対象としたデザインを手がけていますが、この層には高齢者や障害者、字を読むのが苦手な人が少なからず含まれています。いろいろ調べてみた結果、はっきりとしたアセンダーとディセンダーが高齢者には最適だとわかりました。一方、字を読むのが苦手な人には大きなxハイトが最適です。ですから、両方の読者を対象にデザインをする時、厳しいジレンマに陥ってしまいます。良い解決方法はないものでしょうか。

はい、ありますよ。はっきりとしたアセンダーとディセンダーが適していると推奨しているのは、似た文字の区別が必要だからのだと思います。ですから例えば、Futura®などの1階建ての「a」を「d」と比較すれば、しっかりとしたアセンダーが必要だとわかります。しかし、これは、書体デザイナーの主張やこれまでのリサーチから判明している事実と反しています。高齢者にとって一番大切なのは、サイズです。でも、よりはっきりとしたアセンダーとディセンダーを使用した書体をより大きなxハイトの書体と比較したり、異なるサイズと比較するリサーチをしてみるのは、興味深いと思います。

字を読むのが苦手な人に関しては、具体的な状況を把握しなくてはなりません。読解力が低いのでしょうか。識字不足なのでしょうか。視力が低いのでしょうか。それによって、デザインは変わってきます。読解力が問題であるなら、書体がそれほど影響するとは思えません。でも、視力が低いのであれば、xハイトを増やすと読みやすくなるでしょう。近年、児童の低視力に関する研究が行われており、その対応方法が検討されています。

これらすべてにおいて最も大切なのは、今話に出た層に焦点を当てた研究が十分行われていないということです。「字を読むのが苦手な」理由は、視覚障害が原因なのかもしれません。アクセシビリティについて言えば、薬の名前を確認できずに服用してしまったために死亡したという例があります。ですから、ラベル、高齢者向けデザイン、医療環境向けデザインに関する研究が急務なわけです。これらの研究がしっかりとなされていないこと自体が衝撃的です。世間からの疑問の声を高め、この問題に対する世間の注目を集めて、デザインコミュニティ、研究コミュニティ、そして政府からも関心を高め、対応するイニシアチブにより多くの支援が得られることを願っています。

極性試験を行った時、昼間と夜間の両方の環境で試験を行ったのですか。結果は違いましたか。

はい。このプレゼンテーションでは取り上げていませんが、基本的には同じ実験を曇りの日と夜間のシミュレーションで行いました。夜間では、黒の背景に白色の文字だとネガティブな結果が出ました。これには少し驚きました。通常、黒の背景に白色の文字を載せると、白の背景に黒色の文字を乗せた時よりパフォーマンスが劣りますが、これを夜に行うと、結果はさらに悪化しました。

もちろん、自動車市場に対し、現在の慣行を変えるようには推奨していません。自動車内では、黒の背景に白色の文字が適している理由が多くあるからです。第1に、車内に光がたくさんあっては、運転の妨げになってしまいます。また、暗い時に道路を見ながら運転をしていて、車内で手元にある明るい画面を見たら、瞳孔がまた暗い道路に慣れるのが困難になります。つまり、安全面での問題があるのです。

でも、私たちはさらに研究を重ねる必要があります。運転手の注意が反れても問題とならないウェアラブルデバイスなどのデザインの場合は、夜間の極性の効果についてさらに掘り下げた調査をしなくてはなりません。

Chahineさんの最初の研究では注視点について取り上げ、注視時間比率が低い方がよいと説明していらっしゃいました。注視時間比率とは何か、説明していただけませんか。また、なぜそしてどの程度注視時間比率が低い方が良いのですか。

注視とは、文字群の上に目を止め、十分な情報を取得し、次の文字群—たいていの場合別の単語です―に目を移すまでの時間です。被験者の目が止まるたびに、一定時間停止します。その状況で注視に関するすべてを検討し、その平均を算出します。ですから例えば、被験者が私たちのインターフェースと道路の名前のリストを見た時に、目が100回止まったら、注視時間比率は、その100回の時間の平均です。平均注視時間は、読みやすさを判断する上で非常に有用な単位です。

あるテキストを読む時の平均注視時間が300ミリ秒だとします。そして同じテキストで、書体を変えると平均400ミリ秒になったとします。この場合、分量と難易度は同じで、書体を変えると時間が長くかかったということで、2番目の書体は可読性が劣るということになります。

平均注視時間を理解することで、どのような効果があるのですか。

コンテンツの内容が難しいと、平均注視時間が長くなる傾向があります。例えば、天気に関する段落があり、Times®書体、12ポイント、標準文字間隔でタイプセットしてあります。平均注視時間は、250ミリ秒だとします。次に、核分裂に関する段落があります。突然コンテンツがとても専門的で理解しにくくなるため、平均注視時間が350ミリ秒に跳ね上がります。

この場合、これら2つの文章の条件において変化したのはテキストの難易度であり、注視時間がそれを示しています。でも、私が行っている研究は書体の効果に関するものですから、テキストの難易度は同じにし、理解力が結果に干渉しないようにしています。

動きが可読性に及ぼす影響はどうでしょう。読むという動作そのものが変化しつつあります。かつては読んでから何かをするというのが普通の動作の流れでしたが、現在では読みながら何かをするという習慣に移行しつつあります。ですから例えば、ランニングや通勤中など、読む人やインターフェースの動きがテキストの可読性に及ぼす影響は、どのように測定するのですか。

とても面白い指摘ですね。新しい研究に格好のトピックではないでしょうか。このテーマに特化した試験はまだですが、別の関連することの試験を行っています。画面上の情報予測可能性と位置が、可読性と所要時間にどのように影響するかについて調べました。結果はすでに出ていますが、まさにできたばかりなので、残念ながらここでご紹介することはできません。

ですから、どの書体、サイズ、文字間隔、極性がこの状況下でベストな結果を出すかについては予測できませんが、動作中の読む速度は、静止している時の読む速度より遅いでしょう。目の動き方については理解できています。特定の単語を見ている時、脳はある時点で次にどこに目を移動するか、次にどの単語を見るかを決定します。この機能は、周辺視野にどのような情報があるかに基づいています。目が動き続けていると、入ってくる情報が常に変化するので、脳はその影響を受けるものと思います。先に進むことができず、頻繁に同じ単語を見直さなければならないでしょう。でも、先ほどお話ししたようにまだ試験を行っていませんから、あくまでも推測です。

プレゼンテーションで発表した科学的発見に関するリソースを教えていただけませんか。

もちろんです。プレゼンテーションで触れた研究の論文は、こちらになります。

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