Q&A:Jamie Neelyがフォントの選択について語る

ウェビナー「 Choosing Your Path to the Perfect Font」(完璧なフォントを求めて) で、MonotypeプロダクトデザインディレクターJamie Neelyが、デザイナーのフォント選択ストラテジーについて解説しています。プレゼンテーション後、フリーフォントの役割、小画面用のフォント、ペアリングの技法に関する質問に答えています。

フォントを探す際に利用するサイトなどを、もう一度簡単に説明してくださいませんか。

いいですよ。主にMyFontsFontShopTypeCacheTypographicaについて話しましたが、他にも参考になるサイトがあります。

ILoveTypographyは素晴らしいです。Designer News も大変参考になります。僕は書体メーカーサイトも定期的にチェックしています。あまり話題にならないけれども、特筆すべきなのはメールやメールニュースレターです。新しい書体が自分のところに送信されてくるわけですから、すごく便利です。昨年、MyFonts、FontShop、Fonts.comでは、メールデザインを大幅に改善しました。

オフラインはもっと多様で、もう少し面白いです。かなり詳細で一歩踏み込んだ内容のBaseline Magazine, やEye Magazineなどを購読するのも良いでしょう。僕がプレゼンテーションで例に挙げた「Yearbook of Type」を発行しているSlantedなども参考になります。ぜひ読んでもらいたいタイプ専門書籍も20~30冊あります。特に絶版になる前に必見です。話の中で挙げた書籍は、Type Matters、The Type Navigator、The Type TasterThe Anatomy of Typeです [ウェビナービデオページ[ウェビナービデオページのAmazon USとUKのリストに掲載されています]。ハイレベルの文字に関する観点というところでは、Ellen Lupton著のThinking With Type、Jason Santa Maria著のOn Web Typography。もっと深く掘り下げるのであれば、Sophie Beier著のReading Letters: Designing for LegibilitySize Specific Adjustments to Type DesignTim Arruns著のJust Another Foundryがお勧めです。

フリーフォントについて、どう思いますか。使ってもいいですか、それともご法度だと思いますか。

フリーフォントは面白いです。個人的に言えば、僕はインターネットの時代に育ちましたから、オープンソースや手間とお金をあまりかけずに何かを始めて学べるというアイデアには賛成です。ですから、フリーフォントは、書体に取り組み始めたばかりのデザイナーや、学習して、作品を発表、フィードバックを得る必要がある書体デザイナーが、学習段階として使用するのにはいいと思います。

しかし、フリーフォントを評価する際、話題にしない点が他にも数多くあります。例えば、使用を検討するにあたってのポイントは、料金以外にもたくさんあるということ。書体の特質がそのプロジェクトに適切で、合っているかどうかということは、コストよりも優先すべきポイントです。

無料の書体には基本的に限りがあるということにも留意すべきです。タイプデザイナーとしては、報酬が発生しない書体にはなるべく時間をかけたくありません。ですから、フリーフォントのサイトでは、ウエイトが1種類しかないことがよくあります。ウエイトが1種類だけの書体が自分の仕事に向いているかどうかは、すぐにわかることです。でも僕は、後から拡張が可能で、もう少しデザインに柔軟性がある書体を使いたいと思います。フリーフォントでは、将来も利用できるのかどうかがはっきりしません。

もう一つ留意してほしいのは、無料か有料かにかかわらず、ユーザーが書体を所有できるわけではないということです。フォントはソフトウェアだからです。あくまでも、特定のタイプのビジュアルマテリアルで、特定の方法において、そのソフトウェアを使う権利を一時的に借りているだけなのです。「書体が多すぎるということはありますか」という質問に、Adrian Frutigerはあっさりと「ワインが多すぎるということはありますか」と答えました。思えば、無料のワインなんて存在しないですよね。ですから、今後フリーフォント市場がどのように展開するか、興味深く見守っています。

スライドにはどのフォントを使ったのですか。

Cardamonです。これは私にとって、新ストラテジーのカテゴリに入ると思います。かなり新しい書体ということで、使ってみたかったのです。皆さんが使う前に使ってみたかったのです。で、ここで見せて、皆さんに使ってもらい、他のデザイナーに見せびらかせて欲しいと思って(笑)。このフォントが作成された理由や用途の説明を見ると、おそらくスライドデックやプレゼンテーション向けではないでしょう。でも僕はとても気に入っていて・・・頭ではなく、心で決めたという感じですね。こういうことはたまにありますよね。

顧客がフォントの購入を決定する前に、フォントを試す方法はありますか。

オンラインでの作業なら、Typecastがかなり良いソリューションです。すべての大手ウェブフォントプロバイダのフォントが10万種ほどありますし、無料です。ですから、自分の考えたコンテンツのプロトタイプを作成し、共有可能な (ただしインデックスされていない) URLで上げて、お客様に検討してもらいます。またテンプレートが数種類あるので、フォントを並べて比較したり、さっと切り替えたりすることができます。

MyFontsのアカウントを持っていれば、30日間無料でウェブフォントを試すことができ、ウェブページの上部にバナーが掲載されます。大きめのスケールのデザインでフォントを試すのにとても良い方法です。Fonts.comのアカウントを持っていれば、デスクトップフォントをダウンロードすると、5分間無料で試用できます。時間になると、フォントは自動的にシステムから削除されるようになっています。

小型ディスプレイ用のテキストでは、何がお勧めですか。

金属の活字で植字をしていた時代には、書体には各種用途に合わせたバリエーションがありました。例えば、1930年代のTimes New RomanやTimesには、Times 10というバージョンがありました。これは10ポイント未満専用のものでした。現在でも、有名なフォントのファミリーには、同じようにバリエーションがあります。例えば、MonotypeではeTextと呼ばれる書体セットがあり、Neue Helvetica®、Sabon®、Malabar、PMN Caeciliaなど多数のフォント [Fonts.comMyFontsで購入可能] が入っています。

フォントの持ち味と雰囲気を維持しつつ、12px~30pxの範囲で威力を発揮します。また、小さいサイズのテキストにはFont BureauのReading Edgeシリーズもお勧めです。数年前にTypecastでは、Type On Screen(画面用フォント) シリーズの一環としてUIに適した推奨フォントの書体リストも発行しているので、見てみてください。

sans serifとserifフォントの組み合わせに関し、コツやヒントがあれば教えてください。それから、一般的にフォントをペアリングする場合のヒントもお願いします。

ペアリングで実験するには、主に3つの分類があります。逆のスタイル、時代、デザイナーです。書体の裏話や、メタデータがここで役立ちますね。

逆のスタイルでペアリング

例えば、Helveticaをペアリングするなら、他のgeometric/humanist sans serif体は避けたほうがよいでしょう。分類が近い書体とのペアリングは、決してうまくいきません。ですから「類似」は避けて「相違」を目指します。sans serif体とserif体を組み合わせる。script体をhumanist体と組み合わせる。細い書体と太い書体を組み合わせる。などです。

時代で組み合わせる

同じ時代やムーブメントの中でデザインされた書体は、似たような市場ニーズや技術的制約に対応するために作られています。同じように、書体デザイナーは自分たちの周りの新しいデザインに影響されますから、制作するものが同質になる可能性が高いのです。これは特に、進化のスピードが遅い活版印刷の時代 (15~18世紀など) に言えることです。当時は生産や印刷技術が未熟で、現代のように実験する余地がありませんでした。表示用途や制作環境が時代によって全く違うわけですから、現代の新しい書体と古い時代の書体を組み合わせるより、古いものは古いものと、新しいものは新しいものというふうに、同時代の書体を組み合わせた方がうまく調和すると思います。

デザイナーで組み合わせる

歴史を振り返ってみると、活字デザイナーの作品は画家による絵画ようなものだと言えます。それぞれの作品が、クリエイターのスタイルと個性の表現だからです。同じデザイナーが制作したファミリーは基本的にどれも似たような起源、アイデア、プロポーションを持っていて、共通するものがあると思います。実際、様々なデザイナーや書体メーカーがこの点を生かして、うまく合うsans serifとserifファミリーのシステムを上手に開発しています。本文テキスト用だけではなく、活字システム用にすべてのフォントを展開する方が、ビジネスという意味でも理にかなっていますよね。「これとうまく合うのはどのフォントか」という質問には、書体メーカーは実に的確に答えてくれますから、遠慮なくメールしたり、ツイッターでコンタクトしましょう。そこからすごくいい答えが返ってくることがありますよ。

今日の業界でHelveticaが使われているのを見て、どう思いますか。使いすぎだと思いますか。

Helvetica®ほど人気の高いフォントだと、使いすぎという評価を下すのはたやすいことです。でもそれよりも気にかかるのは、Helvetica®がどのように使われているかということです。Helvetica®は、タイトルには素晴らしく向いていますが、小さい文字の本文で使用すると、別のフォントファミリーにたやすく負けてしまいます。「感傷的な」テクスチャを呈してしまうことがあるからです。類似したNeue Haas GroteskやNeue Haas Unicaに変えると、タイトルと長文テキストの両方で厳格なヨーロッパ風の雰囲気を効果的に表現できます。これらのモダンな書体は、デザイナーが意図したスイス風美的センスを損なうことなく、多くの条件下でも効果を発揮するようデザインされています。

顧客に最終的なデザインを提出した時に、フォントファイルを欲しいと言われた場合、どう対応したら良いですか。

ほとんどの場合、フォントファイルを他者に譲渡することは、フォント購入時に同意した標準EULA違反にあたります。ですから、ライセンスの問題を避けるために、お客様に直接ライセンスを購入するよう勧めなくてはなりません。ユーザーが適切な対応ができるよう、Fonts.comでは各フォントページにメールの共有リンクを掲載していますし、MyFontsはお買い物かごに共有リンクがあります。

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