合法的なフォントライセンス契約:フォントに関わる落とし穴に陥らない秘訣

数え切れないほどの組織がマーケティング素材、広告、キャンペーン、新ブランドを発表していますが、採用したフォントがライセンス許諾を受けていなかったという事実に気付く時には、大抵は手遅れです。ここでは、なぜそういう状況が生じるのか、そしてその問題をどうやって避けるべきかについて解説します。

フォント、音楽、映像、色――これらはすべて、デジタル資産やマーケティングキャンペーンの制作に不可欠な要素です。しかし、特定のプロジェクトやキャンペーンにぴったりはまる魔法のようなフォントは、シンデレラのガラスの靴のように、たった1つしかありません。マーケティングチームや制作チームにとっては、プロジェクトの裏にあるメッセージを表現できそうな完璧なフォントが見つかりさえすれば、何もかもうまく収まるように思えます――ただし、合法的なフォントライセンス契約は別として。

考えてみましょう。おそらく制作チームは何時間もかけて、消費者の関心を引きつける他では見られないようなキャンペーンを、複数のチャネル向けに最適化しながらデザインしています。キャンペーンの目的にぴったりのフォントを苦労して見つけ、いざキャンペーンを立ち上げようとしているはずです。

ところが、キャンペーンが始まった後、あるフォントファウンダリから法務部に封書が届きます。成功しているキャンペーンで使われているフォントが適切な使用許諾を受けていないというのです。法務部は対応策を立案し、そのファウンダリや社内の制作チーム、経営陣、広報部と絶えず連絡を取り続けなくてはなりません。キャンペーンの全面的な見直しと、ファウンダリへの損害賠償が発生したときのために、予算も見直さなくてはなりません。フォントライセンス契約をめぐって法廷闘争になれば、批判報道を呼び、費用もさらにかかります。適切なフォントライセンス契約がなかったために、キャンペーンは印刷媒体でもデジタルプラットフォームでも中止となり、関係部署の長は過失の責任をとらされ、会社は損失を出すことになります。

そもそもなぜフォントに投資するのか?

フォントは効果的なマーケティングキャンペーンの鍵です。Oakland Athleticsや Washington Nationalsといったメジャーリーグの球団は、チームを象徴し、他の球団や他競技のプロチームと明確に区別するための特別なフォントを採用しています。Coca-Colaには鮮やかな赤の背景にくっきりと映える専用のフォントがあり、Disney社を創設したWalt Disneyは、「D」の字がくるっと丸まった独自のロゴを考案しました。ロゴ以外にも、フォントは製品に明確なアイデンティティを与えるのにも役立ちます。M&M’sのチョコレートやLouisville Sluggerの野球用品はその好例です。シンプルなキャンペーンという観点から見ても、乳製品の消費を奨励するプロジェクト「Got Milk?(牛乳ある?)」のような広告キャンペーンは、くっきりと読みやすいながらも特徴的な見た目のフォントを使用しています。

さまざまなプラットフォームで広告を打つ企業は、それぞれの媒体で使用するフォントをさらに検討しなければなりません。Instagramでは映えるとしても、YouTubeでは太すぎて見栄えが悪い、というようなフォントもあるからです。屋外の広告看板にはうまくフィットしても、デジタルやモバイルの形式に変換するとほとんどインパクトがなくなるフォントもあります。広告キャンペーンや一般消費者向けのプロジェクトを成功させるために、クリエイターには必要なメッセージをうまく伝えられる特定のフォントが必要なのです。

ファウンダリがすべてを握る

こうしたフォントのライセンスを用意し、ユーザーがその使い方を決められるようにしてくれるのは、ファウンダリ、つまりフォントを制作する企業です。商用ライセンスは、マーケティングキャンペーンや公開されるデジタル資産、新聞や雑誌に掲載される印刷広告、広告看板、ウェブサイトやアプリケーションに適用されるものです。一方、デスクトップライセンスでは、もっと個人的なプロジェクトや、オフィスパーティや社内会議でのプレゼン用スライドなどの内部イベントでの使用が認められます。

フォントのライセンス許諾に関する大きな問題の一つは、ユーザーがフォントや各種のソフトウェアを購入するときに締結する「エンドユーザーライセンス契約(EULA: End-User License Agreement)」です。何億というフォントがオンライン上に存在し、そのそれぞれに EULA があります。企業の法務部はフォントの著作権にかかわる訴訟を避けようと、長時間をかけてその契約を一つ一つ精査します。フォントライセンス契約の規定を誰かが読み違えれば、その結果として、労働時間の面でも訴訟の和解金という意味でも、さらに多くのコストがかかることになりかねません。

失敗から学ぶ――フォントライセンス契約に伴う問題

デザイナーや法務部、そして経営陣も、どんなに細かいことでも手を抜かないことの重要性については身をもって知っています。各業界の大手企業は、次々と販促資料を配り、広告やキャンペーンを打ち、新たなブランドを立ち上げる中で、間違ったフォントを使ってしまった場合、それに気づいたときにはもう遅いのです。

もしライセンス許諾を受けていないフォントを使用した場合、どうなるのでしょうか?エンターテイメント業界の企業の場合、この種のミスは数百万ドル以上の損失につながる場合があります。それでなくても、仕事のやり直しを迫られる従業員の人件費がかかったり、広告費が無駄になったりすることは言うまでもありません。ライセンス許諾を受けていない、あるいは受けたライセンスが適切ではないフォントが使われた商品は、すべて店頭から回収して倉庫に隠すしかなく、二度と日の目を見ることはありません。

こうした頭痛の種に対処しなければならないのは、デザイナーだけではありません。不正使用の程度によっては、会社の評判が大きく傷つき、広報部でも悪夢が始まります。最近、ある企業が「フォントを盗んだ」と非難するニュースが大きく報道されました。「盗む」という言葉がブランド名と並んで見出しに踊ったわけです。フォントを意図的に「盗もう」とする人はほとんどいませんが、このような非難の言葉は人目に留まりますし、インターネットの検索結果からもいつまでも消えません。

以上のような問題はすべて、フォントソフトウェアをきちんと購入していれば起きなかったことです。購入したとしても、たいていは損失が生じた場合と比べればはるかに安いコストで済みます。ある大手企業は、200ドル程度でライセンスを取得できたはずのフォントを不正使用したために、約300万ドルの損害賠償を支払う羽目になりました。

無料フォントはどうなのか?

無料で使用できるフォントも存在しますが、こうしたフリーフォントには無料であるがゆえの問題が数多く伴います。比較的低コストに思える手段でも、結果的に思った以上のコストがかかることになりかねません。デザイナーがフリーフォントに頼った場合に起きる問題をいくつかあげてみましょう。

  • 広告やデザインが同業種の競合他社と似てしまう
  • スケーリングや、特殊文字や別のアルファベット文字の追加ができない
  • クリエイティブに制作できる範囲が限られる
  • マルウェアやソフトウェアウイルスが入り込む可能性がある
  • フォントデザインの質が低い
  • 海賊版フォントの可能性がある

オンラインで入手できる信頼性の高いフリーフォントも少数ながらありますが、それでもこうしたフォントを使用すると、制作した広告キャンペーンやロゴが同業他社のものとそっくりになったり、他業種の大手のものと似たものになったりするリスクがあります。ブランドとは、利用者や顧客に容易に見つけてもらえるように、明確に判別できなければなりません。フリーフォントでは、企業が本来持っている独自のスタイルを際立たせることはできないのです。

フォントのライセンス取得に要する時間

フォントを1つだけ購入するなら、たいていはクリック2回で完了です。しかし、もっと多くのフォントが必要な大企業や中規模企業の場合、すべての関係者から承認をもらう手続きは面倒なものです。フォントのライセンス取得を決めたとしても、手続きそのものに何週間も、あるいは何カ月もかかる場合もあり、ただダウンロードしてすぐに使い始めるというわけにはいきません。法務部はサービス利用規約を隅々までチェックし、予算部門は提出される購入申請を一つ一つ承認しなければなりません。そしてデザイン部門は、経費とデザインそのものを他の部署が承認してくれるのを待たなくてはなりません。待つ必要さえなければ、その期間に制作に励んだり、新しいアイデアを思いついたりできたかもしれないのです。

一度に必要なフォントが1つだけなら、おそらくこの方法でも問題ないでしょう。けれども、広告部門やクリエイターが複数のプロジェクトを同時進行させている場合、フォントが一つ一つ承認されるのを待っている時間はないでしょう。また、承認手続きの過程で一つ間違いが起これば、その間違いが招いた結果に会社全体が打撃を受けることになります。
 

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広告キャンペーンやデジタル資産を華やかに彩ってくれる新しい刺激的なフォントを求めておられる企業や個人のお客様のために、Monotype Fontsはシンプルな解決策をご用意しています。それは、15万以上のフォントにアクセスできるパッケージプランです。このパッケージでは、プロトタイプ作成やテスト利用は制限なしでできるため、何の妨げもなく最高傑作の制作に取り組んでいただけます。

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まとめ

ライセンスを取得しなくても使えるフォントを見つけ出したり、担当業務の範囲を超える法的問題に対処したりする面倒な事態にクリエイターを巻き込んでいい理由はありません。Monotype Fontsなら、デジタル資産でも印刷媒体でも、それぞれのキャンペーンやプロジェクトにぴったりの見せ方を、一切のストレスなく見つけることが可能です。

詳しくは、Monotype 担当者までお問い合わせください。

合法的なフォントライセンス契約:フォントに関わる落とし穴に陥らない秘訣
N-1-6249
Functional