消費者の期待はどう変化し、それがあなたにとって何を意味するのか.

How customer expectations have changed and what this means for you.
今日のユーザーは、オンライン上でこれまでとは異なる行動を取り、ブランドに対してより高い期待を抱いています。

念のためお伝えしますが、最近、世界や文化には大きな変化起きています! 部屋の中のCOVIDに何もかもを結びつけたくはありませんが、世界的なパンデミックは、孤立感を長引かせると同時に、デジタル体験への依存を一層深める引き金となりました。

気候変動は、生物多様性やサステナビリティに対する消費者の関心を一層高めています。さらに、警察による暴力は公民権運動を再燃させ、ブランドの多様性、公平性、インクルージョンに関する取り組みや社会的活動への注目も集めました。こうした社会的な変化が、デザインやユーザーエクスペリエンス、そして消費者とブランドの関わり方にどのような影響を及ぼしているのか。その背景を理解するために、ぜひ続きをご覧ください。

パンデミックは、すべての人のデジタルに対する期待を大きく変えました。

ロックダウン、「Zoom授業」、そして多くの人々がリモートワークに移行したことで、ここ数年で自宅やスクリーンの前で過ごす時間が大幅に増加しました。私たちは、あらゆる形やサイズの長方形のデバイスと親密になり、多くの人にとって、スクリーンとのやり取りが一日の中で唯一のコミュニケーションとなることもありました。そして、ブランドとデジタルでやり取りすることへの慣れも加速しました。パンデミック前は、ブランドとのメッセージのやり取りは、カスタマーサポートチャネルとして5番目に多く利用されていましたが、現在では2番目にランクインしています。それに呼応するように、最も賢明なブランドは、冷たく一方的な情報提供者から、共感し、つながり、連帯する存在へと変化を遂げました。

この変化によって、デザインの世界にも次のようなドミノ効果が起きました:企業は、よりやわらかく丁寧なメッセージングやデザインを通じて、世界が抱える日々の困難に寄り添おうとする方法を模索しました。そして初めて、デザインコミュニティの外にいる「普通の消費者」たちが、デジタル空間で目にする情報が、しばしば同じテンプレート、同じ構成、同じ書体でつくられていることに気づき始めまたのです。ブランドマネージャーやクリエイティブ担当者たちは、私たちのデジタル環境における多様性の欠如、独自性の欠如、そして人間らしさの欠如に、あらためて向き合うようになりました。

パンデミックは、ブランドにより多くのアプリや新しいサービスを展開を促しました。

パンデミック以前、多くのブランドは真に包括的なデジタル体験を提供していませんでした。「体験」」といっても、その多くはビジュアルや雰囲気に限定されていたのです。デジタルの本質的な魅力は、インタラクティブ性にあります。たとえばマウスの動き、メニューやアニメーションへの反応、質問への回答方法など──こうした細やかな要素を取り入れることで、ブランドはこれまで以上に繊細かつ個性的な声を発信するようになりました。この変化を象徴するデザイン上の例が、バリアブルフォントの導入です。さまざまなシチュエーションに柔軟に適応できるこのフォント技術は、ブランド表現に新たな可能性をもたらしています。

在宅勤務が本当に生産性を高めるかどうかには議論の余地がありますが、通勤やオフィスでの滞在時間がなくなったことで、多くの人が超効率化され、その結果、より迅速あるいは即時のレスポンスや体験への期待が高まりました。人々はスピードを重視するあまり、たとえ個人の金融セキュリティへの意識がやや緩んでも、店舗で買い物よりも配送を選ぶなど、リスクをいとわない傾向を強めています。これに応えるかたちで、企業はパーソナライズ、プライバシー、セキュリティ対策への取り組みを強化せざるを得なくなっています。バリアブルフォントはまだ発展途上ではあるものの、ブランドにとっては、多様な 声を持ち、パーソナリティのあるUX体験を設計するための強力なツールになりつつあります。言い換えれば、ユーザーごとの「パーソナリティプロファイルに応じた体験を提供できる可能性を秘めているのです。

パンデミックによる閉塞感は、娯楽や現実逃避への集団的な欲求を高めました.

わずか2年ほどの間に、私たちはオンラインショッピングから、バーチャルショップに足を運び、ピクセルで再現された服を試着する世界へと一気にジャンプしました。不安感や孤立感、そして自宅で過ごす時間の増加が、新しいテクノロジーや仮想体験への抵抗を薄め、消費者がバーチャルな世界に対して心地よさを感じるようになったのです。その証拠が必要ですか? メタバースを見てみてください。ここでは、莫大な投資とクリエイティブな挑戦が行われています。「現実」と「仮想」の境界は急速に変化しており、ブランドにはこの新たな空間でも体験をデザインし、提供することが求められています。

たとえば、次のような事例があります:

複数の要因がブランドアクティビズムのブームを引き起こしている.

地に足をつけて考えましょう。先ほど述べたように、私たちはいま、サステナビリティ、多様性、公平性、インクルージョンといった社会的課題への意識が、かつてないほど高まっています。その流れの中で、ブランドアクティビズムが大きな注目を集めるようになりました。もちろん、人々がこうした問題に関心を持つようになったのは新しいことではありません。しかし注目すべきは、ブランドの目的よりも社会的な姿勢(アクティビズム)のほうが、消費者の心を動かしているという点です。消費者は、単にビジネス上のミッションを掲げるだけでなく、社会の正義を追求しようとするブランドに共感し、そうしたブランドとの関係性を求めています。人々は今、ブランドが実際に社会的問題の解決に積極的に関与しているかどうかを見ています。

さらに深く掘り下げると、消費者はそのブランドが本質的に何を意味しているのか、つまり、どんな価値観や指針を持って存在しているのかに注目しています。そして、ブランドの指針は、経営層から定義されるべきものです。それは単なる理想論であってはなりません。消費者は表面的なポーズを見抜きます。ブランドとのあらゆるタッチポイントで一貫して感じられる、真摯で、人の生き方を肯定するような価値観でなければならないのです。Monotypeのエグゼクティブ・クリエイティブディレクター、Phil Garnhamは、実例を挙げてこう語ります。「今朝、大手スーパーが出す過剰なプラスチックごみに疑問を感じて、環境配慮型の洗濯用品を定期購入しました。Instagram で広告を目にしたのですが、ビジュアルの美しさに惹かれたわけではありません。より良い選択ができる、節約になる、デジタル体験がスムース、そして“社会的に良いこと” に貢献できると感じたからです」。Garnham が既に日常的に利用していた空間(Instagram)のネイティブコンテンツ、デジタル体験の利便性、そして「社会にとって良いこと」をしたいという気持ちに応える設計、それらが揃ったことが、彼「定期購入」へと駆り立てたのです。ここれはまさに、ブランドがミッションドリブンであることが、現実の消費行動につながるという好例と言えるでしょう。

では、トレンドと消費者の期待はどのように関連しているのでしょうか?

髪型やデニムの流行に限らず、Z世代のトーンや価値観は、他のあらゆる世代に影響を与えつつあります。この激動の時代に成長したZ世代は、企業と関わり、購買行動を取るうえで、これまで以上に多くのものを企業に求める最初の世代と言えるかもしれません。私たちが目にしているのは、意識の高い消費者の行動が、企業のリーダーシップに広範な変化をもたらしているという波及効果です。

トレンドと消費者の期待の関係には、単純な原因と結果の構図は当てはまりません。それはまるで渦のように複雑に絡み合っており、文化的な影響も期待を形成し、トレンドを生み出します。まさに「鶏が先か卵が先か」と同じ構図です。ある流行は偶然の創造的な出来事から生まれ、またあるものは必要性から—いわゆる全能のクリエイティブブリーフに導かれるかたちで生まれます。消費者は慣れ親しんだものに安心感を覚える一方で、デザインやブランディングにおける予想外の驚きも評価しています。たとえば、2022年のType Trendsレポートで紹介された住宅ローン会社のHabitoは、夢のようなカラーパレットと遊び心のあるメッセージを取り入れた予想外のブランディングで、類似する競合の中で明確な差別化を実現しました。また、Superunionによって手がけられたHermesの「Evri」へのリブランディングも特筆すべき事例です。Monotype Studioが手がけたカスタムバリアブルフォントを用いた「生きたロゴタイプ」は、190,000以上のバリエーションを持ち、かつてない個性をブランドにもたらしています。

もちろん、すべてのブランドが何千通りもの可変ロゴを制作する予算を持っているわけではありません(また、その必要もありません)。しかし、デザインやUXを考えるうえで、デジタル成熟度の段階を念頭に置くことが役立つ場合があります。デジタル成熟度スペクトラムの初期段階では、オープンソースツール、フリーフォント、既存のテンプレートを使ってウェブサイトやアプリを構築するブランドも多く見られます。これは必ずしも低予算のアプローチを意味するわけではなく、きちんと設計されていれば、クリーンで明確な機能性をもった体験として違和感なく機能します。一方で、デジタルスペクトラムの高い段階にあるブランドでは、HabitoやEvriのように、より洗練されたブランド表現が展開されています。

それでは、競争力を維持するための基準とは何でしょうか?

ここ数年のデジタルの急成長は、ブランドに対するインタラクティブな体験の期待値を明確に定義し、押し上げる役割を果たしました。先進的なブランドは、ユーザーが必要とする頻度に応じたサブスクリプションモデルを構築し、それに共感の姿勢をしっかりと取り入れています。そして現在では、テクノロジーの民主化とデザインやウェブツールの普及により、ほとんどのブランドにおいてデザインやUXの品質は一定以上の水準に達しています。私たちが注目したトレンドの一つは、新しいユニバーサルスタイルの出現です。現代のオンラインブランドにおけるフラットデザインが主流になり、まるで5年前のミニマリスト系スタートアップデザインに回帰しているかのようです。多くの企業が、クリーンで幾何学的なスタイルのタイポグラフィを採用しています。 

一方で、現状打破を目指す企業は、自社の独自の立ち位置を、手作業でつくり上げたWebやアプリ体験の提供、メタバースのような新しい領域への挑戦、カスタム書体の活用、意外性のあるブランディングや人間味のあるトーンでの表現といったアプローチをとっています。こうした成功の背後に共通して存在するものは何でしょうか? それは、綿密に設計されたフォント選びです。ブランドやキャンペーン用のフォントをライブラリから選ぶにしても、既存のフォントを修正するにしても、カスタム書体を発注するにしても、そのフォントがメッセージを的確に伝え、技術的な要件を満たしていることを確認してください。

つまり、基準というものは存在せず、あなたが参加する市場やその周辺に存在するブランドによって、その基準は設定されるのです。クリエイティブ担当者やブランドマネージャーとして、あなたが本当に意識すべき唯一の指標は、顧客にとって最も魅力的で革新的な体験をどこまで提供できるかという一点に尽きます。もしあなたが、まったく新しい何かを生み出すことができれば、あるいは既存のものにひねりや意外性を加え、それをユニークなものとして感じさせることができれば、そのブランドは確実に際立つでしょう。さらにその先を目指すのであれば、創造的なストーリーテリングやパーソナライズされたメッセージを織り込み、ユーザーの心に響く意味のレイヤーをもう一層加えてください。それができたときこそ、あなた(またはクライアント)が思い描いていたクリエイティブブリーフを完全に実現し、ブランドのストーリーを真に輝かせたといえるのです。

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消費者の期待はどう変化し、それがあなたにとって何を意味するのか.
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