試行によるデザイン: 仮想世界で意味のあるつながりを生み出す.

Elizabeth Ann Clark.
私たちの多くが、かつてないほどお互いを遠くに感じていた時期に、Zoom、FaceTime、ライブ配信、オンラインビデオゲームといったソフトウェアは、直接会って交流する代役を果たしてきました。仮想現実も利用が増加しており、多くの人にとって、他のプレーヤーとともに仮想ゲームに参加することは、他のメディアでは到達することのできないインタラクティブ性(ファントムタッチを参照)を提供することができます。
私たちはしばらくの間、仮想環境で書体がどのように使われるかに特に関心を持ちながら、VR空間を見守ってきました。
「この分野で働くにはとてもエキサイティングな時期です。音楽、ゲーム、エンターテインメントからソーシャルな体験まで、あらゆるものを体験する方法のパラダイムをシフトさせ、イノベーションを起こす余地がたくさんあります」と、VRゲーム開発会社AEXLABのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、Elizabeth Ann Clarkは言います。
Clarkは、AEXLABとその主力VRゲーム「VAIL」のビジュアル美学を監督し、ビジュアルデザイナー、アーティスト、コンセプトアーティスト、テクニカルアーティスト、キャラクターアーティスト、環境アーティストのチームを管理しています。AEXLABはこれまでに、Red Bull、American Institute of Architects、Epic Games向けにVR体験を制作してきました。
2015年、Clarkは意図せずしてVRデザインに足を踏み入れました。もともと映像作家として訓練を受けてきた彼女は、自身がプロデュースしたアルバムのために「Water Planet」というゲームプロジェクトに取り組んでいたところ、ある人物から「これをVRに変えたらどうか」と提案されました。音楽プロジェクトとして始まったものは映画へと進化し、最終的にはバーチャルリアリティへと発展し、やがてマイアミのInstitute of Contemporary Artに展示されることになりました。
当時、駆け出しのVRデザイナーや開発者向けのリソースはあまり多くなかったため、Clarkと彼女のパートナーでありAEXLABのCTOであるAlbert Ovadiaは、Unreal Dev Grants プログラムや、小規模ながら急成長しているVRコミュニティ、そして何時間にも及ぶテストを頼りにしました。
「他のメディアにアプローチするときと同じようなデザインの選択を試みることはできますが、同じ原則が必ずしもVRに適用されるとは限りません。だからこそ、仮想世界の中で情報を提示する方法を探るのは、非常に興味深い旅となっています」とClarkは語ります。たとえば、2D空間と比較してVR向けにデザインする場合、プレイヤーは360度全方位を見渡すことができ、環境の隅々まで詳細に探索できるため、カバーすべきスペースははるかに多くなります。VRゲームをデザインする際に考慮すべきもうひとつの重要な要素は、インターフェイスです。
Elizabeth Ann Clark.
テキストに関して、ClarkはVRで適切に表示させるためには多くの微調整が必要だと指摘します。AEXLABは、VAILのメニューやミニマップのテキストが快適で、プレイヤーの好みに合わせてカスタマイズできるように懸命に取り組んでいます。「VRでは、何が快適かを見つけるために、本当に実験しなければなりません」とClarkは述べます。「場所やサイズ、フォントの品質によっては、実際にユーザー体験に大きな影響を与えることがあります。下手をすると乗り物酔いの原因にもなり得るので、試行錯誤の段階なのです。現時点では最適な使用例についてのドキュメントは存在していません。無料で入手できる情報はたくさんありますが、デザインにはまだまだ改善の余地があると思いますし、今後2、3年のうちに多くの発展が見られると考えています」。

Clarkのチームは、VAILに使用する書体の選定にも細心の注意を払いました。AEXLABのCTOであるOvadiaが、このゲームのフォントであるAileronsを見つけました。このフォントは、実はブラジル人のデザイナーがグラフィックデザインの学位取得のために制作した卒業論文プロジェクトでした。ゲームの舞台は近未来の終末後の地球で、軌道上に存在するコロニーが、新たな人生の段階を約束するという設定です。ビジュアル面では、主にモノクロームの色調とネオンカラーのアクセントを用いたミニマルなデザイン言語で、未来的でSF的なテーマを掲げています。書体はVR体験の中でうまく機能しながら、その美的感覚にフィットする必要がありましたが、Aileronsはその仕事をうまくこなしました。
「Aileronsをデザインしたデザイナーと、彼がデザインに際して行った選択について詳しく読むうちに、この書体に惚れ込んでしまったんだ。美しいのは、フォントの名前でもある「エルロン」が、飛行機の主翼が持ちあがって動く仕組みの一部である機構を指している」

書体デザイナーのAdilson Gonzalezは、1940年代の航空機からインスピレーションを得ており、その影響はSFテイストをアクセントにした風通しの良いデザインに表れています。Clarkもまら若手デザイナーの支援に情熱を注いでおり、お気に入りのリソースのひとつは、世界中の若手アーティストが制作したフォントを紹介するフォントライブラリ、Typelabだと述べています。
一般的な美的感覚について、Clarkはお気に入りのPantone スウォッチであるネオンスライムグリーンについて熱弁をふるっている。「最近は#C0FF00に完全に取り憑かれています。私の大好きな緑色で、文字通り使うのを止められないんです」。VAILの最初のデザインは非常にモノクロームでしたが、チームは徐々にゲームにより多くの色を取り入れてきました。このことは、ゲームをより親しみやすくし、より幅広いオーディエンスに訴求できる可能性があるとClarkは考えています。
キャラクターデザインに関しては、Clarkが敬愛するファッションの影響やデザイナーたちからインスピレーションを得ており、ミニマルなSFの美学を保ちつつ、それらを自身の作品に取り入れることを目指しています。
「飛び込んで、ただシーンをつくるのが大好きなんです」と、Clarkは自身のクリエイティブプロセスについて語ります。 「これまではそのやり方を逆算で進めることが多かったのですが、今はより多くの時間をかけてコンセプトを練り、より良いワークフローを構築しようとしています」。ほとんどの場合、彼女はスケッチや絵コンテを描くよりも、シーンをつくり上げるためにUnreal Engineに飛び込んだり、ビデオクリップのレイアウトに取りかかっています。
「Unreal Engineのツールにアクセスできるようになったことで、自分自身の世界を作り出すことが可能になりました。これから始めるには、今は本当に魔法のような時期だと思います」
VRデザインについてもっと学びたい人に向けて、ClarkはUnreal Engineをダウンロードして、無料の教育用チュートリアル、ミニコース、ポッドキャスト、そしてYouTubeのライブ配信などをチェックすることをおすすめしています。