デジタルノイズの中でブランドを際立たせるためにできること.

世界中のあらゆる企業がアプリ、オンラインサービス、その他のデジタル施策を立ち上げ、COVID危機による混乱に対処する中で、多くのブランドはこの急増したデジタルノイズの中で、どうやって自社を際立たせることができるかを考えていることでしょう。
ビジネスを際立てるポイントを考えると、多くの人は顧客が目にするものを思い浮かべます。Webサイト、モバイルアプリ、デジタル広告など、それらが直感的なUXにより、閲覧・購入・情報取得をスムーズに行えるよう設計されていることが重視されます。
しかし、優れたUXはかつてのような差別化要素ではなく、顧客が当然のように求める「前提条件」となっています。その結果、デジタルデザインは進化し、幅広いユーザー層やタッチポイントにおいて効果的であると証明された基本的な原則に徐々に収束しています。最近の調査では、過去10年間でWebサイト間の違いが大幅に減少したことが確認され、特にレイアウト面の違いが最も小さくなっていることが明らかになりました。
同質化は必ずしも悪いことではありません。例えば、車の運転方法を知っていれば、他の車にも応用することができます。デジタルデザインにも同じことが言えます。基本的な構造やレイアウトが似通っていることで、人々は使用しているデバイスが変わっても、それほど苦労せずにWebにアクセスすることができます。
ですが、そこで課題が生じます。 Webの構造がどんどん似通ってきている中で、どのようにして違いを生み出すことができるでしょうか? しかも、かつてないほど困難な状況下で、それをどう実現するのか?
細部にこそ、差が生まれる.
シンプルな答えは「あなたのブランド」です。当たり前に聞こえるかもしれませんが、間違いなく言えるのは、今はいかなる種類のブランディングを行うにしても非常に挑戦的で重要な時期であるということです。では、デジタル領域でブランドの存在感を築こうとしている企業にとって、それはどのような意味を持つのでしょうか?
再び車に例えてみましょう。一度車の運転方法を知れば、他の車でも運転できるというのは事実です。しかし、実際の体験には車ごとに大きな違いがあります。それらを決定づけているのは細部です。ボタン、ダイヤル、メーターの配置だけでなく、それらがどのように見え、感じられ、機能するか——これらの細部が車の「体験」を形成し、ひいてはブランドそのものを形成しているのです。
Webサイトも同じです。この場合の細部とは、フォント、色、画像、アイコン、そして動画といったクリエイティブアセットのこと。これらの要素がブランドの体験を形成し、価値観や個性を体現し、ストーリーを語り、顧客とつながる役割を果たします。
しかし、ほとんどのビジネスにおいて、1つのWebサイトだけを管理すればよいというわけではありません。多くのブランドは、アプリ、デジタル広告、SNS、動画コンテンツなど複雑なデジタルエコシステムを管理しています。顧客もこれらをフルに活用しています。90%の顧客が複数のデバイスを使用してタスクをこなしており、70%が3つ以上のデバイスを使用、67%は異なるデバイス間で作業を継続しています。
だからこそ細部が重要になります。これらの接点の一つ一つが、顧客とブランドの間の広範な関係に影響を与えるため、すべてが一貫したビジュアルシステムのもとに設計されている必要があるのです。細部を正しく設計することで、顧客の体験に対する姿勢や、特別な価値を提供する意志を示すことができます。つまり、このブランドは私たちの体験を大切にしてくれていると実感してもらえるのです。
例えば、ある企業のアプリを開いた時に、どこか違和感を覚えたことはありませんか? フォントが正しく表示されていなかったり、色合いが期待していたものと異なっていたりするかもしれません。一見すると些細な問題に思えるかもしれませんが、そのブランドに慣れ親しんでいる人にとっては、大きな違和感として伝わります。「なんで違うんだろう?壊れてる?それとも偽物のアプリなのかも?」
こうした小さな不具合や障害が、ブランドへの顧客のつながりを損なうきっかけになることもあります。顧客の選択肢は増え続けており、特に現在の状況下では、必要な対応ができていないブランドに対して顧客の目は厳しくなりがちです。ほんの小さな違和感が、顧客離れにつながるかもしれません。
内側から構築する.
統一されたビジュアルアイデンティティを維持するためには、同じレベルの意識を社内にも持つことが不可欠です。
ブランドを守るのは、クリエイティブ部門やマーケティング担当者の役割だと考えがちですが、メールを送る、プレゼンテーションを行う、請求書を作成するなど、いかなる業務を担当するチームメンバーもブランドのアイデンティティを維持する役割を担っています。
たとえメールやプレゼンが社内向けで一般に公開されなくても、それらは依然としてブランドのネットワーク内に存在しています。そこで自問してみてください。社内の人々はどんなフォントを使用しているでしょうか? それは私たちのブランドフォントなのか、それとも彼らが適当に選んだものなのでしょうか? 経理担当者やカスタマーサポート、そして経営に携わる人々は、自分たちのブランドフォントを理解しているでしょうか?
実際には、組織内の誰もがブランドマネージャーであり、それを自覚しているかどうかに関わらず、その役割を担っています。したがって、細部が重要である以上、組織の全員がブランドの担い手としての自覚を持つべきです。
顧客が目にすることのない細部を気にかける人は、顧客が目にする部分にも、より高い意識で取り組むことができます。チームがブランド資産に精通し、それを自分の仕事に取り入れていれば、顧客の信頼に関わるるような、ブランドの一貫性のズレにいち早く気づくことができるのです。ただし、重要なのはその権限を与えるということです。「これからは全社員がメールでXYZフォントを使うこと」と通知するだけでは意味がありません。目的意識を共有し、何よりも社内の人々がブランド資産に簡単にアクセスして使えるような環境を整えることが、企業として重要なことなのです。
これこそが、「細部にこだわる」ことを実践する姿勢です。つまり、顧客の目に見える部分だけでなく、ブランドのあらゆる側面が、顧客と共有するビジョンに忠実であるように組織的な取り組みを進めることです。特に多くのブランドがデジタル化に向かっている今、この取り組みは非常に重要です。この努力は、私たちの新しい日常が定着した後も長期的に成果をもたらすでしょう。
最終的に、真に顧客とつながり、違いを生み出せるブランドは、顧客の視点で考える必要があります。そして、人生には簡単な解決策がないことを私たちは皆知っています。特に現在のように、誰も予測できない未来に直面している中ではなおさらです。
「Authenticity(本物らしさ)」は何かを演じることではなく、企業の在り方の本質です。それは人々が見えないところに根付いており、大半の人が知ることのない選択の積み重ねから構築されています。