フォントでブランドをより人間らしく感じさせる方法.

最近では、本物の人間に出会うことがめっきり少なくなったように感じます。私たちはますます、信用ならないボットや合成音声、人工知能とやり取りするようになっています。いわゆるインフルエンサーとして知られる「実在の人々」ですら、根本的にはつくられた存在です。ビジュアルフィルターは、今やごく普通のものとなっています。
今こそブランドを人間らしくする絶好のタイミングです.
本や講座、TEDトークなどで、多くのいわゆる「思想的リーダーたち」が「本物らしさ(オーセンティシティ)」を提唱しているのも不思議ではありません。彼らは本物の人間は本物の人間に反応することを知っているのです。私たちは皆、鼓動や感情、さらには不完全ささえも求めています。人間は、人間らしさを大切にするのです。あなたのブランドも、そのことに気づくべきでしょう。
好感度には個性が欠かせません.
賢いブランドは、人間らしさに対する本能的な魅力を理解し、真の個性を打ち出すよう努めています。自らの信念を言語化し、思いやりを持って行動し、人間味のある雰囲気や声をつくり上げることで、多くの企業が、自分たちを親しみやすく、共感でき、好感の持てる存在として表現しようとしているのです。つまり、まるで人のように。

人間らしさはデザインによって形づくられる.
メッセージと並んで、ブランドのデザインは、それが世の中にどう認識されるかにおいて極めて重要です。よく練られた効果的なデザインは、感覚に訴える強い印象を与え、ブランドの独自性や記憶に残る度合いを高めることができます。それはブランドの個性を映し出し、強化し、ブランドの特別な立ち位置を明確にします。
そして、人間味あふれるデザインの中心には、タイポグラフィがあります。
書体という言葉は、実に的を射ている.
人間の顔を見て私たちが瞬時にさまざまな印象を受けるように、タイポグラフィからも瞬時にその印象を読み取り、ブランドの性格を直感的に判断することができます。力強いものから華やかなもの、若々しいものから成熟したもの、穏やかなものからダイナミックなもの、上品なものから風変わりなものまで、ブランドの文字の見た目は、そのブランドがどんな存在かを世界に語りかけます。
Comic Sans は、私たちに学びを与えてくれる.
漫画のセリフをモデルに、広く使われているフォントである Comic Sans, には、確かに多くの批判者がいます。しかし、その誕生の背景や今も続く普及ぶりには注目に値するものがあります。それらは、フォントの持つ力や、タイポグラフィに人間的な温かみを求める私たちの深い欲求を、実にわかりやすく示しているのです。
なぜ Comic Sans は存在するのか?
Simon Garfieldが『Just My Type: A Book about Fonts』の中で説明しているように、「タイポグラフィック・エンジニア」であるVincent Connareは、1994年に Microsoftである特定の目的のためにComic Sansを作成しました。彼は、Microsoft Bobというソフトウェアの未公開バージョンを目にしており、その中で、Roverという親しみやすいイラストの犬が、Microsoftの機能をユーザーに紹介する役割を担っていました。しかし、吹き出しに使われていた Times New Roman は、Microsoft Bobが目指していた、楽しく、親しみやすく、アクセスしやすく、威圧感のない雰囲気にはまったく合っていなかったのです。
そこでConnareは作業に取り掛かり、そうした親しみやすい吹き出しにふさわしいフォントを作成しました。手書き風で、丸みを帯び、無邪気な印象を持つフォントでした。
残念ながら技術的な理由におり、彼のフォントは短命に終わったMicrosoft Bobには組み込まれませんでした。しかし、最終的にはWindows 95にバンドルされることになり、そこから先はもう後戻りできませんでした。
ユーザーが、より形式的で伝統的なフォントの選択肢の中に、Comic Sansを見つけたとき、それがより親しみやすく、温かく、控えめに感じられたため、自然と選ばれるようになったのです。つまり、一言で言えば、「より人間らしい」と感じられたのです。
今日では、レストランのメニューやパトカー、戦争記念碑に至るまで、Comic Sansはあらゆる場所で見かけるようになりました。そこから、人々が共感できるタイポグラフィを深く求めているとということが、はっきりと見えてきます。
(なお、Monotype チームとしては、Comic Sans以外にもヒューマナイズされた書体が多数あることを補足しておきます。「類似を表示」機能を使えば、多くの代替書体を簡単に見つけることができます)
フォントを人間らしくするものとは何か?
オンラインでカスタマーサービス担当者とチャットしているときに、相手が本当に人間なのかと、疑問に思ったことはありませんか? 私たちは意識的にも無意識的にも、相手が「ボット」か「人間」かを見極めようと、さまざまな手がかりを探してしまうものです。
タイポグラフィでも同じです。フォントに人間らしさを感じる理由がはっきりしている場合もあれば、言葉ではうまく説明できない場合もあります。たとえば、手書き風フォントは、もちろん人が実際に書いたような印象を与えます。しかし、より伝統的な書体であっても、人間の精神を伝えることは可能です。
ヒューマニストフォントとは何ですか?
ヒューマニスト書体は、人間らしさを持つ書体の元祖です。
手書きフォントよりも洗練され、標準化されていますが、ヒューマニスト書体はカリグラフィの流れをくむ、人間の手の動きを基にした特徴を持っています。最も現代的なヒューマニストサンセリフ体でさえ、長い書字文化の歴史のおかげで、ほとんどの読者に「自然に感じられる」比率、形状、感覚を反映しています。
さらに、人ヒューマニストサンセリフ体にはもうひとつの利点があります。それは読みやすさです。MonotypeはMITと共同で、自動車のディスプレイに表示される2つの異なる書体の判別性を比較する研究を行いました。比較対照となったのは、スクエアグロテスク体のEurostile®,と、ヒューマニストサンセリフ体の Frutiger®です。研究の詳細はこちらで確認できますが、要点としては、Frutiger®のほうがより速く、正確に読まれるという結果が得られました。
それに加えて、率直に言えば、Frutiger は四角くて無機質な印象のEurostileよりも、温かみがあり、親しみやすく感じられるのです。
ペンマンシップは慎重に選びましょう.
手書きの書体は、その性質上、人間らしさを備えています(私たちの署名が、まさに個人を識別する手段であるように)。しかし、手書き文字には強い個性が表れるため、こうしたフォントは慎重に選ぶべきです。Monotypeのクリエイティブ・タイプディレクター、Terrance Weinzierlは、こう説明しています。「手書きの書体は、即座に人間味を感じせることができますが、人々はそれに対して非常に敏感です。まるで顔の表情のように。ですから、多くの選択肢を検討し、完璧な手書きフォントを選ぶ必要があります」。
手書きフォントの印象は、さまざまな要素によって左右されます。以下の点を考慮してみてください。
- 使われた筆記具の様子:万年筆、筆、それとも別の何かで書かれたように見えますか?
- 書かれた下地の質感:それは80ポンドのコットン製便箋に書かれたのでしょうか、それともコンクリートの壁に書かれたのでしょうか?
- 筆致の全体的なムードや印象:落ち着いていますか、高揚していますか? 曲線的、それともギザギザした感じ? 控えめ、それとも陽気な感じでしょうか?
また、アセンダーやディセンダーの高さ、線の太さ、判別性といった実用的な要素も重要です。他のフォントと組み合わせや、さまざまな使用シーンでどう機能するかも、忘れずに検討してください。
ノスタルジア:昔ながらの人間らしさ.
ノスタルジアは、ブランドのデザインに人間味をもたらす強力な手段になり得ます。映画、テレビ、書籍、インターネットのおかげで、現代の多くの人々は特定のデザインの時代を見分けることができ、そこから特定の感情や印象を呼び起こします。デザインがある時代を思い起こさせるとき、それは、誰もが知っていて愛する家族の物語のように、親しみやすく、意味深く、心地よいものを伝えることができます。
2021年、Burger Kingはノスタルジアを活用してデザインやタイポグラフィの刷新に見事に成功しました。彼らのウェブサイトに見られる、柔らかく、曲線的で、安心感のある文字のフォルムをぜひ見てみてください。それが何を意味しているのかについては、Monotypeのシニア・タイプディレクター、Phil Garnhamによるこの記事で紹介しています。ノスタルジアを求める心理やその効果についてさらに詳しく知りたい方は、Garnhamへのインタビューもあわせてチェックしてください。
性格診断をしてみましょう.
書体を評価するときは、まずは直感に従い、次に意識的な分析を行うとよいでしょう。以下のように自問してみてください:
- この書体は、機械によってつくられたように感じますか、それとも人の手でつくられたように感じますか?
- 手づくりのように感じられるなら、どんな人物がつくったのでしょうか? その人はどんな服装で、どんな振る舞いをするでしょうか?
- 文字の整い具合はどうですか? 異体字を使えば、どの程度のバリエーションを加えられそうですか?
- この書体は滑らかな印象ですか、それとも尖っていますか? 触り心地は良さそうですか、それとも突き刺さるような感じがしますか?
角度、カウンター、リガチャなど、すべての細かなディテールを観察してみてください。それらはなぜ含まれたのか、何を伝えているのか、自分に問いかけてみましょう。
親しみやすいタイポグラフィの好例としては、Monotypeが M&M’s のために制作した書体のケーススタディをご覧ください。この書体All Togetherは、笑顔のようなインクトラップに至るまで、すべてのディテールが、M&M’sというクラシックなキャンディブランドの、楽しくて、遊び心があり、カラフルな個性としっかり結びついています。
理想の「人間らしい」書体を見つける方法.
Monotype は、あなたのブランドの個性を正確に反映するフォント選びをお手伝いします。豊富なフォントライブラリを訪れ、手書き風、ブラシスクリプト、カジュアルスクリプトなどのカテゴリを検索機能で探してみてください。さまざまな書体を見比べていく中で、自分が惹かれるフォントや、逆に「これは違う」と感じるフォントに共通する特徴に注目してみましょう。「似たものを表示」リンクをクリックすれば、あなたの好みに合った新しいフォントをさらに見つけることができます。
これらの人間らしさを取り入れたブランディングのヒントは、すべて自己認識から始まります.
タイポグラフィは、ビジネスと社会をつなぐ強力なツールです。しかし、このツールを活用する前に、まず自分たちがどのようなブランドを表現しようとしているのかを、明確に理解しておく必要があります。
あなたとチームが、自分たちのブランドがどのような「人間」であるかを特定するという重要な作業をしっかり行っているか、確認してください。言い換えれば、もっと個人的に、詳細に、分析的に、そしてときに執着心をもって向き合うことが大切です。ブランドが使う(あるいは使わない)言葉、関心を持つテーマ、そして根本的な性格を明らかにしましょう。それができて初めて、タイポグラフィでそのブランドを適切に表現することが可能になります。
また、人間的な特性はブランドを構成する要素の一部に過ぎない場合もあります。あなたのデザインには、革新性、技術、自動化といった要素が、人間的な「個性」と並んで求められるかもしれません。ブランド構築が簡単だなんて、誰も言っていません。
Monotypeは、そのお手伝いができます。カスタム書体を選ばなくても、Monotypeでは250,000以上のすぐに使えるフォントを揃えた広大なフォントライブラリを利用できます。サブスクリプションに加入すれば、無制限のプロトタイピングアクセス、商用利用可能なフォント、そして月間数百万ページビューの配信が可能です。
そして何より、Monotypeのチームは本物の「活字好き」で構成されており、あなたのブランド表現の旅を心からサポートしたいと思っています。どうぞお気軽にお問い合わせください。