私たちは皆、同じ船に乗っている:内側からブランドを構築することの重要性.
誰もが知っている言葉、「what’s on the inside matters most(中身が一番大切)」。確かに、人の性格は見た目よりも重要ですが、それをブランディングに置き換えるとどうなるでしょうか。ブランドは、顧客と関わるために特定の見た目や振る舞いをする必要がありますよね?
外に向けて発信するものはすべて、内部で強力に結束したものでなければなりません。現実には、自覚の有無にかかわらず、組織の全員がブランドマネージャーの役割を担っています。経営層から新入社員に至るまで、一人ひとりがその組織の取り組み、ミッション、そして全体的なアイデンティティに関与し、ビジョンを前進させる責任があるのです。
「多様な業務を抱える大規模な組織になると、その中で自分の位置を知ることが難しくなることがあります」と、PentagramのアソシエイトパートナーであるBritt Cobbは述べています。「社内ブランディングは、全員が行っている仕事により高い目的と意味を与えることを目的としています。どんなに小さい仕事でも大きい仕事でも、自分が行っていることを会社全体のミッションに関連付ける能力を持てるようにすることが大切です」
目指すのは、従業員それぞれがより大きなものの一部であり、ブランドの成功に貢献する役割を担っていると感じられるようにすることです。「社内ブランディングは『上から目線での一方的な伝達』ではなく、むしろ参加型で魅力的な、皆で一緒に取り組むようなものであるべきです」とCobbは説明します。「ある意味で、士気を高めるスローガンのようなものです」
社内ブランディングは、組織の人々が自分の仕事に意味を見い出し、その仕事が組織のミッションにどのように貢献しているかを理解する手助けをします。全員が大きなビジョンを共有し、自分の努力が組織にとって成果をもたらすことを理解できるようになると、仕事を孤立したものとして捉えるのではなく、より強いつながり、関与、そして満足感が生まれます。つまり、誇りにつながるのです。
従業員に権限を与える.
私たちは、クリエイティブやマーケティング担当者がブランドの主な守護者だと考えがちです。しかし、メールを送信したり、プレゼンテーションを行ったり、請求書を作成したりするすべてのチームメンバーが、ブランドのアイデンティティを維持する役割を担っています。
Britt Cobb, Associate Partner, Pentagram.
たとえメールやプレゼンテーションが社内向けのものであり、一般に公開されることがないとしても、それらは依然としてブランドのネットワーク内に存在しています。メンバーはどのフォントを使用しているでしょうか? ブランドフォント、それとも無関係なものですか? 経理担当者、カスタマーサービス、そして経営層は、ブランドフォントが何かを知っていますか? 細部が重要であるならば(そして実際に重要です)、組織内の全員がブランドの担い手であるという自覚を持てるようになるべきです。
顧客が決して目にすることのない細部を気にかける人々は、顧客が目にする細部にもより関心を持てるようになります。チームがブランド資産に精通し、それを自分の業務に活用することで、顧客の信頼が得られるか失われるかという重要な場面で、一貫性の欠如に気付きやすくなります。この全てにおける重要なキーワードは「empower(権限を与えること)」です。単に「今後はメールでXYZフォントを使用すること」と通達して終わり、では不十分です。企業側が共通の目的意識を育み、何よりもブランド資産に簡単にアクセスし、活用できる環境を整えることが求められます。
Cobbは、非デザイナーがブランド資産を使用することには一定のリスクがあると示しつつも、それが正しい選択だと語っています。ブランドを共有可能なものとして開放することで、より多くの人々が関与し、それに参加し、自分の仕事に取り入れることができます。「デザインをしていると、それらをできるだけ安全に保つために、囲い込んで管理したくなります」と彼は言います。「しかし、現実の世界はそのように動いてはいません。すべてをデザインで統制することはできません。大切なのは、人々がブランド資産を自分にも使えると感じられるようにすることです」
ブランド資産に限らず、デザインは共有された視覚言語を通じて人々を結びつける役割を果たします。「時に、本当に素晴らしいのは、何かをデザインしたとき、その仕事に直接関係のない人々がそれに共感し、それを使いたいと思ってくれることです。彼らはそのデザインを誇りに思ってくれているのです」とCobbは言います。「彼らは『その新しい魅力的なものが欲しい。CEOが着ている新しいTシャツを着たい。その一員になりたい』と言います。デザイナーとしては、自分の作品を人の手に渡すのに慎重になるのは当然ですが、人々がそのデザインを使いたいと思うこと自体が、誰かにとって意味のあるものだという良い兆候であり、称賛すべきことです」
Britt Cobb, Associate Partner, Pentagram.
デザインは組織の多くの部分に影響を与えます。そして現在、Cobbはブランドにおいてさまざまな人々と関わっています。それにはマーケティング部門だけでなく、例えば人事部、CSR、研究開発部門などが含まれます。彼らはプレゼンテーションやフィードバックのラウンドを経てデザインプロセスに深く関与し、「それがまるで彼ら自身の子供のように感じられる」とCobbは言います。「私たちが望むのは、彼らのアイデアを反映して具現化することです。彼らが自分の心、自分の考え、自分の思考をデザインの中に見出すことができることです」
したがって、プロジェクトの成功とデザインは切り離せないものになります。Cobbは次のような例を挙げて説明します。「ブランドが新製品を発売し、その結果としてサービスを利用する顧客が増えたり、製品の売上が大幅に伸びたとします。デザインがこれらの結果をもたらしたと認識されれば、社内のチームにもその一員であるという感覚や誇りを与えられるのです」
Brand Talks Connectedの講演で、CobbはVerizonで実施した社内向けのブランディングプロジェクトに関する取り組みを紹介しました。この経験を通じて、公開を目的としないプロジェクトであっても、ある種の形で外部に影響を与える可能性があることに気づかされたと彼は言います。「社内ブランディングは人々を結集させて彼らの仕事を進める助けとなります。その結果、社員はそのビジョンやメッセージ、そして考え方を、自ずと社外向けの仕事にも反映させるようになるのです」
Cobbは、これらの社内向けプログラムが意図せず、あるいは意識的に外部化されることがあると指摘しています。特に今日のデジタル環境では、ブランドがかつてよりも多様な方法で顧客にアプローチする能力を持つようになっています。このような場合、社内に向けて発信したメッセージは、結果的に、顧客に向けたブランドの声になる可能性があるのです。
社内ブランディングは、単に気持ちの良い組織をつくるための施策ではありません。Wrike Project Managementが行った調査によると、社内ブランディングは従業員のエンゲージメントにプラスの影響を与え、それが顧客のエンゲージメントや生産性の向上、従業員の定着率改善、そして21%の収益性向上につながることが示されています。この調査では、従業員がエンゲージメントを保てる理由として挙げた上位3つが、「仕事を楽しめている」(43%)、「チームと良好に協力できている」(40%)、「自分の仕事が会社全体の目標達成に寄与していると感じられる」(26%)でした。これに対して、従業員がエンゲージメントを失った理由として挙げた上位3つは、「価値を認められていない、または評価されていないと感じる」(45%)、「給与が低い」(32%)、「業務過多による燃え尽き」(29%)でした。つまり、感情的な側面で皆を結束させるだけでなく、社内ブランディングの取り組みにはビジネス上の意義もあるのです。
リーダーシップ層が「全員の関与が成功につながる」と信じ、それを明確に伝えることで、社員は支援されていると感じ、力を得ることができます。彼らは前進し続ける意欲を持ち、ブランドの一員として行動し、可能な限り最高の仕事をしたいと考えます。ある意味で、社内ブランディングは単なるデザイン、メッセージ、施策以上のものであり、それはつながりや関係性、ポジティブなフィードバック、そして共感に関わることの積み重ねなのです。
ブランドの理念を行動で示す.
ブランドが選択し発する言葉はすべて、そのブランドが何者であるか、そして業界やコミュニティ内でどのような立ち位置にあるかを形作ります。ブランドが行うすべての行動は、そのアイデンティティに正直で誠実でなければなりません——あらゆるレベルで、そしてビジネスのすべての領域で。実際にブランドが掲げている理念を体現しておらず、従業員を大切にしていないとすれば、誰もロゴのスペーシングやフォントの正しさなど気にかけなくなるでしょう。社内ブランディングがCobbが警告するような「上からの押しつけ」に陥らないためには、社員自身が参加したいと思わなければなりません。そして、それはブランドが主張する価値観を行動で示す必要があるのです
より大規模な組織では、顧客や社会に与える影響力が大きいため、その企業の運営全体が注目される可能性があります。これには広告費の使い方、従業員への待遇、化石燃料からの撤退やその他のサステナビリティに関する取り組み、祝日に店舗営業をするかどうかの判断などが含まれます。このような決定は、ブランドに対する従業員や消費者の認識に影響を与えます。そしてやはり、社内施策が外部にも影響を及ぼすのです。
「特に今年に入って表面化したさまざまな社会問題に関して、Verizonのような大企業が無関心でいることはできません」とCobbは述べています。「彼らはあまりにも大きい存在です。だからこそ、彼らがどこで広告を出すか、どこに資金を投入するか、そして誰とブランドを結びつけるか、そのすべてが非常に重要です。我々は“キャンセルカルチャー”の時代にいるので、発言や行動について極めて慎重である必要があります」とCobbは続けます。「しかし、Verizonは従業員に対して、自分たちの目標やミッションを伝えるのが非常に上手です。彼らが大きな決断をするとき、例えばFacebookに対する抗議として、1か月間にわたって広告出稿を停止したときも、従業員にその理由を明確に説明していました」
広告出稿やその他の運用は内部的なものである一方で、それが消費者の目に触れることになり、ブランドの姿勢や価値観(社内ブランディングの重要な柱となるもの)についてのメッセージを示す場合があります。情報の透明性が求められる時代において、これらの運用は秘密裏に行われることはありません。もしその選択が顧客の価値観と一致しない場合、ブランドは「キャンセル」されるリスクがあるとCobbは警告しています。
「本物らしさは、ブランドが言葉で主張するだけでなく、それを実際に行動に移すときに現れます」と彼は言います。「例えば、あるブランドが数年にわたって、社会的に不利な立場にある人々を支援する取り組みをしていると主張しながら、現在の人種的公正を求める運動に何の行動も示さないのであれば、それは本物とは言えません。行動せずに言葉だけで済ませることはできないのです」
一方で、ブランドは自分たちの行動にも気を配る必要があります。ブランドの価値観が特定の文化的な文脈への参加を裏付けておらず、ただ単に顧客からの一時の注目を得ようとして便乗するだけであれば、消費者はそれを見抜いてしまいます。まず社内のメッセージを整え、組織全体がそれを支持する体制を整える必要があります。それができて初めて、社外への発信が意味を持つのです。
Britt Cobb, Associate Partner, Pentagram.
「例えば、ブランドのコミュニケーションが一貫性を欠いていて『この会社、大丈夫かな? ブランドとしての見せ方や語り方がバラバラだな』と感じるような場面があります」とCobbは続けます。「顧客としては、必ずしも直接的にどこがどう悪いと分析するわけではありませんが、何かしっくりこない、または少し居心地の悪い感覚を覚えることがあります。それは場当たり的だったり、よく考えられていないように感じるためかもしれません」
すべてのブランドが顧客に提供したいのは、誰かがきちんと管理しているという安心感です。また、提供されるサービスが偽りではなく、誠実さから生まれているものであるということです。
Allison Rebecca Pennはボストンを拠点とするフリーランスのクリエイター。デザイン、ファッション、不動産、銀行業、教育、消費財業界での執筆経験を持つ。プライベートでは、地元のダンスカンパニーでダンスをしたり、スクーターで街を回ったり、フムスを食べたりして過ごしている。