O2の新しい声――カスタム書体.

フォントは、ブランドのDNAの一部であり、メッセージを視覚的に伝えるうえで欠かせない要素です。フォントは、顧客から感情的な反応を引き出す力を持っています。― Paul Skerm(クリエイティブディレクター、ブランドエージェンシー)

Paul Skerm - Creative Director, Brand Agency.

Monotype のエグゼクティブ・クリエイティブ・タイプディレクター、Phil GarnhamがO₂およびそのブランドエージェンシーとともに、O₂の新しいカスタム書体について語ります。この書体が、O₂をよりデジタルで現代的なブランドへと押し上げ、さまざまな市場でその存在感をどのように高めたのかを、詳しく掘りさげています。

O₂ は、Telefonicaが展開する主力のモバイルファーストブランドであり、日々をより良くすることを目指しています。卓越した顧客体験と明快なコミュニケーションを通じて、顧客がモバイル接続の価値を最大限に活用できるように支援しており、そうした理由から、O₂はタイポグラフィをブランドの中核に据えています。ブランドデザインのあらゆるレベルで、テキストの明瞭性と、言語のもつ人間らしさが、ブランドの本質を形づくっています。

Frutigerは、2002年のO₂設立以来、その声としてブランドを支えてきました。しかし、私たちを取りまく世界が変化しているように、通信市場も変化のただ中にあります。デジタルの接点が広がる中で、ブランドにはあらゆるメディアにおける一貫性と、明確な「らしさ」がこれまで以上に求められています。O₂とFrutigerの長年にわたる関係は、Frutiger というフォントがいかに優れたデザインであるかを物語っています。明快な判別性を備えた Frutigerは、ブランド立ち上げ当初には非常にトレンドに合っており、信頼できる働き者として活躍してきました。しかし現在では、その安定感ゆえにやや予測可能であり、ブランドを際立たせる個性には欠ける面が出てきています。

O₂ブランドが新しい日常へと進化しようとする中で、O₂とそのブランドデザインエージェンシーは、より独自性があり、人間中心の声を伝える新たな書体のデザインについて、Monotype Studioに相談を持ちかけました。求められたのは、現代のブランドが直面する多様なニーズや課題に答えられる、シンプルかつ洗練されたアプローチのフォントファミリーです。

O₂はカテゴリーの枠にとらわれないブランドであり、単なる「通信事業者(Telco)」を超えた存在です。複数の業界を横断し、実店舗でもオンラインでも、多くの人々の記憶に強く残る、社会的な存在感をもったブランドです。イギリス国内に20の音楽会場を所有し、イングランドのナショナルラグビーチームのスポンサーでもありみあす。O₂が目指すのは、テクノロジーそのものではなく、テクノロジーによって可能になる人間の体験にフォーカスしたブランド価値の発信です。

今日、多くのブランドが一貫性の重要性を認識していることは間違いありません。本当に大切なのは、それに情熱を持つだけでなく、それを的確に実行する方法を知っている人がいることです。

― Fcancisco Foncea(Telefónica グローバルコーポレートブランドマネージャー)

プロジェクトは、O₂のブランドチーム、クリエイティブディレクターのPaul Skerm、そしてMonotypeのシニアクリエイティブ・タイプディレクターである Phil Garnham とともに、ロンドンのスタジオで開催されたキックオフミーティングから始まりました。私たちはまず、ブランドにおける書体の使われ方を分析し、通信業界の動向を深く掘り下げました。さらに、O₂ というブランドの性質や個性について議論を重ね、Frutigerの好きな点・好ましくない点、書体デザインのトレンド、初期のスケッチブックに描かれたアイデアの共有など、多角的な視点から検討を行いました。カスタム書体のデザインは、チーム全体で進める協働的なプロセスです。こうしたオープンな対話を重ねることで、書体デザインのあらゆる側面に応えるための確かな枠組みを構築することができました。

当初から、開放感と「通気性」が新しいフォントが成功するための鍵になることは明らかでした。活字における「酸素」をテーマに、私たちは幾何学と円形性、アクセシビリティ、明瞭さ、楽しげな活気、そして温かさに目を向けたさまざまなアイデアを生み出しました。この書体は、デジタルの中にある人間らしさを称える必要がありました。私たちは、「Breathe it all in(すべてを吸い込む)」、「Magical realism(魔法のようなリアリズム)」、「Priority(優先順位)」というキーワードを使った広告に、新しいフォントのアイデアを閉じ込め、最も基本的な質問を投げかけました——「何がしっくりくるのか?」「この書体はO₂らしさを語れているか?」

3つのアイデアが共鳴し、概要を固める手助けとなりました。丸みの感覚は重要で、字形には開放感が必要でした。O₂ブランドは安心を与えるものなので、デザインは構造的にシンプルでなければなりませんでした。しかし、Frutigerがブランドに深く組み込まれているため、完全にオープンな円形のアプローチは現実的な選択肢ではありませんでした。比例して、すでにプレースホルダーとしてFrutigerを使用している新旧のテンプレートでデザインが全社的に機能する必要があり、リフローを調和させる一方で、字形を音色的に進化させる必要がありました。 

ストロークにおける円環性を探求し始めました。ペンの動きに合わせて文字が内側や外側に丸みを帯びる、人間の手による動き、カリグラフィの影響というアイデアを導入しました。書くこととタイポグラフィが交わるところに生まれる、擦り切れたエッジもその一部です。文字のステムが機械的な感覚から離れ、より人間中心の流れへと向かっていく、前進するリズムを目指しました。

書体は少しずつ命を宿し始め、字形のセットが拡張される中で、私たちはプロポーション、さまざまなサイズでの表示、リフロー、アクセシビリティ、個性に関する懸念を解消できるよう、多くの時間をかけて検証を行いました。すべての文字に対して複数のクリエイティブなバリエーションを用意し、数字セットや、フォントファイル内からロゴ使用を自動化するOpenTypeの機能も追加しました。書体はブランドチームによるテスト段階へと移行しました。 

この時点で、私たちはイタリック体やキャンペーン用のディスプレイフォントについて考え始めました。ローマン体のカリグラフィ的な影響を踏まえ、筆記体でより自然な印象を持つイタリック体のフォントセットをつくりたいと考えました。そしてディスプレイフォントについては、コアフォントファミリーとのシナジーを保ちしつつ、もう一つの次元を加えることができるインタラクティブなフォントスタイルをつくりたいと考えました。Paulと彼のチームは Frutiger のアウトラインバージョンを使って実験やアニメーションを行っていましたが、アウトラインの適用やアニメーション化は手間のかかるプロセスでした。私たちはプロジェクトの範囲を超えて、Bold フォントスタイルから3種類のアウトラインストロークを作成しました。

最終的なカスタムフォントはOn AirとOn Air Outlineという名づけられ、O₂の価値観の中心である開かれた姿勢と信頼に基づいた、一貫性のあるブランド言語を作り出しています。 

On AirはLight、Regular、Bold、Blackの4ウェイトに加えてイタリック体が含まれた、それ自体で完結できるフォントファミリーで、On Air Outlineは3つのスタイルで利用可能です。 

O₂の新しいカスタム書体「On Air」の、アニメーションで描かれる旅路をご覧ください。書体に酸素を吹き込む、そのプロセスをお楽しみください。

O2の新しい声――カスタム書体.
N-3-4531
Agency, Creative