より良いフォントライセンス戦略を構築するための5つのヒント.

Kevin Laurino.
フォントのライセンス取得にそれほど注意を払ってこなかったブランド、つまりフォントを購入、更新、共有するための優れた社内システムやプロセスを持っていないブランドにとって、膨大なフォントライブラリを整理することは途方もない作業のように思えるかもしれません。それはまるで何年も、何も考えずに箱を次々と押し込んできたガレージや屋根裏部屋に、思い切って入ってみるようなものです。暗くてクモの巣が張った隅に何が潜んでいるか、誰にもわかりません。一体どこから手をつければいいのでしょうか?
圧倒されるように見えるかもしれませんが、解決策は思っているよりもシンプルです。Netflixのアート&プリントプロダクション、レタッチ、フィニッシングのマネージャーであるKavin Laurinoは、彼のキャリアを通じて築いたフォントとの関わりから得たの経験と、ブランドのフォントライセンス管理するという手強い存在を手なずける方法を共有しています。ここでは、あなたがフォントライセンスの管理を始めるのに役立つ、彼のヒントを紹介します。
1. 基本を理解する
ほとんどの場合、フォントの不適切な使用は、ライセンスの仕組みを正しく理解していないことによる単なる事故です。しかし、意図的であろうとなかろうと、ライセンスを取得せずに、あるいは既存のライセンスでは許可されていない方法でフォントを使用することは、非常に問題があります。知的財産(IP)の保護には理由があり、適切なライセンスが確保されたうえで、正しく理解され、ナビゲートされる必要があります。そうしたエンドユーザのライセンスがなければ、IPの使用は本質的にアーティストから盗んでいることと変わりません。
「手遅れになるまで、誰もフォントのライセンスについて話しません」とLaurinoは言います。「よくあるのが、『30ドル払ってこのフォントのライセンスを買ったんだよ。それの何が問題なの?』という反応です。ですが、それ以上に多くの問題があるのです」
このような頭痛の種を避けるには、フォントライセンスの重要性とその細かな違いについて、自分自身とチーム全体を教育することがもっとも簡単です。ブランドがフォントライセンスを取得した後でも、ライセンスは綿密に管理されなければなりません。使用権と使用をすべて削除しなければならない可能性があります。
「私の目標は、人々が理解できるようにするだけではなく、その人たちの周囲の人々も理解できるように、十分な情報を提供することです」とLaurinoは語ります。「ある人は専門的なマーケターかもしれませんが、フォントライセンスの細かな点には詳しくないかもしれません。ですから、きちんとした判断を下せるだけの十分な情報を提供することが重要なのです」
Kevin Laurino.
2. 手持ちのフォントを評価する.
基本的な知識を身につけたら、次は自分たちが持っているフォントを調べてみましょう。これを行う最も簡単な方法は、ブランドにとって大きな弱点になり得る資産の所有履歴をたどることです。フォントのライセンスを取得した人物が会社を去ると、何が、なぜ、どの期間ライセンスされていたのかという記憶が失われてしまうことがあります。このようなケースで、既存のフォントのライセンスを検証できない場合、最善の解決策は、適切なエンドユーザーライセンスを持つ類似のフォントに置き換えることです。
「誰がこのフォントを送ってきたのかがわからない場合、私はこう考えます。『自分と会社を守るために、何をすべきだろうか?』と」Laurinoは語ります。「多くの場合、それは検証可能なフォントに置き換えることを意味します。『これが私たちがこのフォントを使っていい証拠書類です』と言えるようにしておく。残念ながら、たとえ「E 」と 「S 」の形が少し違って見えたとしても、受け入れてそのフォントを使うしかありません」.
手持ちのフォントを確保するとなると、しばしば規模の問題に直面することになります。数百のフォントであれば何とか対応できますが、1万や2万のフォントを扱うとなると、その作業に圧倒され、途方もない時間がかかるように感じられるかもしれません。そのような場合は、一度に1つのプロジェクトに着手するというアプローチが有効です。こうすることで、自分自身とブランドを守ることと、実際に仕事を進めていくことのバランスを保つことができます。
最後の注意:このプロセスは困難で、行き詰まることも少なくありません。あるフォントが商用利用可能かどうかを判断するのは、フリーフォントを使っている場合はとりわけ難しいものになります。Laurinoは、周囲の人々と正直かつ率直にコミュニケーションをとり、必要な情報を得るためにためらわないことの重要性を強調します。それは、あなた自身の知識を補ってくれる人々とつながったり、ライセンスを明確にするためにデザイナーやフォント所有者に連絡を取ったりすることを意味します。こうした情報を捜し出すための掘り下げげは簡単ではないかもしれませんが、法的な頭痛の種につまずかないようにするためには不可欠な作業です。
Kevin Laurino.
3.リスクヘッジ.
すでに使用しているフォントのライセンスを確保することに加えて、誤用が起こる前にそうならないように先手を打つことが重要です。これを現する最善の方法は、できるだけ早い段階、できればブリーフィングの時点で、すべてのプロジェクトの利害関係者の足並みを揃えることです。そうすれば、すでにライセンスされているフォントをチームに導入したり、必要に応じて新たなライセンスを取得する手助けをしたりすることができます。こうすることで、不適切なフォント使用のリスクをヘッジし、ブランドが被る金銭的法的危機を減らすことができます。
しかし、いつもそううまくいくとは限りません。そして、権利関係が不明確なフォントを使用しているプロジェクトに遭遇した場合、それらのフォントをより安全なものに交換するための会話は、厄介なものになる可能性があります。「すべては人間関係と期待値のマネジメントなんです」とLaurinoは言う。「私は、相手の立場を理解することに多くの時間を費やしています。彼らのためになる解決策にたどり着くために」
Laurinoにとって、「リスクのある 」フォントの代替案をすぐに提示できるようにしておくことは非常に重要です。クリエイティブ・チームは自分たちの作品に強い思い入れがあるため、たとえ法的に義務付けられている場合でも、フォントを変更するように説得するのことは難簡単ではありません。しかし、もしチームが使うべきでないフォントを使用している場合は、結局、理想的とは言えない状況下で、作品を変更することになる可能性もあります。
「それはもう、営業トークのようなものになってしまういます」とLaurinoは言う。「基本的に、私はこう言っているんです。『君たちがこの作品のために懸命に働いてきたか知っています。作品の細部を練りあげるために、映画監督と夜遅くまで話し合ったことも知っています。でも、このフォントは私たちをリスクにさらすことになると伝えなければなりません。だから、このフォントを変更することを提案したい。それと、使えそうな選択肢を10個くらい見つけたんだ」。
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4. 当て推量を排除する.
では、プロジェクトごとに適切なリズムを見つけられたとしましょう。それは素晴らしいことですが、そのような方法でフォントの使用量を管理することは持続可能でしょうか?
「『プロセス』という言葉は、ある界隈では汚い言葉かもしれません」とLaurinoは言う。「ですが、現実には何かをつくるにはある程度のプロセスが必要です。リスクを最小限に抑えるプロセスを導入しながら、力を与えるデザイン文化を創造する、そのバランスを取ることがコツです」。
「プロセス」という言葉が時折ふざけた反射反応を引き起こすのことは事実です。ですが、もしかしたら「構造 」という言葉のほうが適切なのかもしれません。考え抜かれ、構造化されたプロセスは、その存在が見えないように感じられるはずです。それは、仕事とその仕事に取り組む人々を邪魔することなくサポートし、プロジェクトがステップからステップへと滞りなく流れることを可能にします。では、デザイナーの創造性を阻害することなくリスクを軽減するクリエイティブ・チームのためのシステムをは、どのように構築すればいいのでしょうか? あるいは、Laurinoの言葉を借りるなら、「チームが他のことに集中できるように、当て推量を取り除くにはどうすればいいのか?」
多くのブランドにとって、れはストックイメージライブラリの購買のと同じように、使用が承認されたフォントの明確なライブラリを確立することを意味します。ブランドのフォントセットは数十にも数千にもなりますが、いずれにせよ、デザイナーにとって安全で安心な空間をつくり出し、全員の時間と労力を節約することができます。ブランドがMonotype Fontsのようなフォントライブラリを使用する場合でも、ライセンスされた独自のフォントコレクションを使用する場合でも、クリエイティブチームは特定のフォントセットの範囲内で自由にデザインすることができるのです。
これはリスクを軽減するだけではありません。利用可能なフォントの安全なライブラリがあることで、クリエイティブチームが特定のフォントに関連する権利について何時間も調査する必要がなくなります。よく設計されたセットアップライブラリには、特定の用途に対してクリアされた(そして明確にラベル付けされた)フォントが含まれています。
あらゆる作品、あらゆるタイトル、あらゆるカテゴリー、そして世界中から、10ステップのプロセスのうち3ステップを省くことができれば、人々の注目を集めることができます」とLaurinoは言います。
5. 協力関係を築く.
ほとんどの人は、「ノー 」という言葉を聞きたくないがために、法務部との関わりを避けがちです。「許可よりも許しを請うほうが良い」ということわざもあります。
フォントに関しては違います。Laurinoは、法務との連携は「取り締まりではなく、パートナーシップなのです」と強調します。「早い段階で法律の専門家を招き、使用可能な知的財産の範囲内にあることを確認しましょう。一番避けたいのは、実際に人前で使えないものに誰かが惚れ込んでしまうことです」。
これは法的な法務に限ったことだけではありません。Laurinoは、土壇場でトラブルが発生する可能性を最小限に抑えるために、組織全体の主要な利害関係者と提携することを勧めています。これは、組織内のすべての専門家に当てはまることです: AV(映像・音楽)、印刷、デジタル、物理的な制作など、前もって問題を回避するための舵取りをしてくれる人なら誰でもです。あなたが聞きたくないことを教えてくれるかもしれない人たちと協力関係を築きましょう! プロジェクトに時間と人件費を投じる前に、それうした関係を得たほうがずっといいのです。
「こういった会話は、ときに不快なものになる可能性があることを認める必要があると思います」とLaurinoは言います。「簡単なことだとは言いませんが、価値のあることです。そして現実は、あなた方全員が同じ目標に向かって働いているということです。それは、素晴らしい仕事を成し遂げ、ブランドやクライアントを守ることです」。
Kevin Laurino.
つまり、要約すると :
適切なフォントライセンスの取得は、金銭的および法的責任からあなたのブランドを守るために不可欠です。どのようなプロジェクトにおいても、デザインの計画段階でフォントライセンスについて対処することで、頭痛の種、時間、越す尾T、そして精神的な苦労を避けることができます。
ライセンスの問題が発生した場合には、なぜそのフォントが使用できないのかを全員に教育し、交換可能な類似フォントを解決策として提示するよう努めましょう。
フォントライブラリを使用して積極的にリスクヘッジを行うことで、クリエイティブチームに特定のフォントグループの中でに制作する裁量を与えながら、明確で安全なアート作品を得ることができます。
法務部はあなたのパートナーであり、警察ではありません! フォントを発表する前に、公共の場で使用する許可を得ましょう。組織全体の専門家と協力関係を築いてください。
あなたには、ブランドのために最善を尽くす責任があります。最善の決断ができるよう、声を上げることや自分自身を教育することを恐れてはいけません。わからないことがあれば、いつでも質問し、情報を探し出せるようにしておきましょう。
教訓: 現実から目を背けないこと.
あるプロジェクトで怪しげなフォントが使われているのを見つけたとしよう。誰も気づかないだろうと、自分に言い聞かせたくなるかもしれません。誰がそこまで注意する? それに、場合によっては誰も気づかないかもしれない。そうだろう?
「(フォントを)見て、商用利用や有料マーケティングに使うには、おそらく問題があると直感的にわかることがあります」とLaurinoは言います。「現実から目を背けてはいけません。どれだけの人が見るかは関係ないのです。知的財産権の保護があることには理由があります。IPに関わることで、最も重要なことは、誰にもバレないだろうと思い込まないことです」。
より広い意味で、Laurinoは、複雑に見えるかもしれないトピックについて、私たちは自分自身を教育することから逃げるべきでないと語ります。フォントライセンスは、実際にはそれほど複雑なものではありませんが、専門用語や、間違えた場合のリスクを考えると、威圧的に感じられるかもしれません。特に、プロジェクトの成果物と納期が危ぶまれるなかで、自分がフォントの承認や調査を求められる立場にある場合はなおさらでしょう。
「最近学んだことのひとつは、すぐに答えが見つからなくても大丈夫だということです」とLaurinoは言います。「自分の知識がその分野の限界に近づいていること、そして正しい決断を下すためにはもっと学ぶ必要があることを共有していいんです」
「私はこれまで、フォントとその関連事項についての実践的な知識を深めてきました。でも、もし私がもっと深い理解を求めていて、周りの人たちが私のことを社内のフォントの「専門家」のように扱い始めたとしても、私が知ったかぶりをしているだけだったら、本当の意味での成長は望めません。弱さを見せることは悪いことじゃないんです! 弱さは仕事ができないことを意味しません。そうではなく、今まさに成長しようとしていることを伝えているのです。ですから、自分の知識を補ってくれる人たちを探しにいきましょう」
Jessica Saxenaは、ビジネスとデザインの交差点に情熱を注ぐフリーライターです。執筆していないときは、本に没頭しているか、周囲の世界を探検している姿が見られるでしょう。