Good Type, part 1:優れた書体は、その先人を敬う

多くの組織は、フォント管理ツールの重要性や、それがないことによって発生し得る問題を認識すらしていないのかもしれません。

すべてのフォントには、その誕生にまつわる歴史が存在します。古代の神話や民話の要素が現代のポップカルチャーに再び姿を現すように、何十年も前のデザインの断片が新しいフォントの中にその姿を現すのです。

フォントには歴史が息づいている.

Bodoniのような古典的な書体でさえ、その前進となる書体の特徴を備えています。DidotFournierBaskervilleなど先行するデザインの形状がBodoniDNAの中に、欠かすことのできいない一部として組み込まれているのです。

「私たちは無意識のうちに、互いが提供する素材や創造性に頼り合いながら、それを自分自身のものとして再構築しているのです」と、MonotypeのプロダクトデザインディレクターであるJamine Neelyは言います。「タイポグラフィをよく観察すると、単なる文字以上のものが見えてきます。書体はその時代のしばしば文化、政治、デザイン、ファッションなどの雰囲気を反映していますし、互いに影響を与え、刺激し合い、補い合う存在でもあります。そうした関係性こそが、このアートフォームを前進させる原動力となっているのです」

すべてのフォントには、その誕生にまつわる歴史が存在します。

視覚的・文化的なさまざまな影響が交わる中で書体が生み出される以上、同じ形やスタイルの痕跡が何度も繰り返し現れるのは、決して驚くことではありません。それらは、まったく新しいデザインの中に現れることもあれば、歴史的な書体の復刻という形で現れることもあります。

すべての古いものは(やがて)再び新しくなる.

Rudolf KochによるKabelは、何度も改刻を重ねながらも、その独自の個性と魅力を失うことなく受け継がれてきた書体の好例です——それが実現できたのは、Kabelの歴史を尊重したデザイナーたちのおかげでもあります。Kabelはもともと1920年代に制作されましたが、最初の改刻は1970年代にITCによって行われ、新たな技術的要件にアップデートされると同時に、当時の美的感覚にもより近づけられました。このアップデート版にあh、Kabelの構築的で幾何学的な外見が多く残されていますが、オリジナルにはなかった少しの遊び心も加えられています。

この書体は、2017年にデザイナーのMarc Schützによって再び改刻され、Neue Kabelとしてリリースされました。優れたデザイナーであれば誰もがそうするように、彼は歴史を徹底的に調査し、Kochのオリジナルのスケッチを見つけ出して、自身のアプローチが歴史に忠実であることを確認しました。しかし、Schützは独自の工夫も加えました。月日を経て失われてしまったかもしれないいきいきとした表情を取り戻し、ブランディングやエディトリアルでの使用に対応できるように、イタリック体と追加のグリフを加えたのです。そして、この書体に対する最大限の敬意として、オリジナルデザインに存在していたすべての歴史的な代替文字が収録されており、OpenType機能を使用すれば、デザイナーはSchützによる丸いドットと、オリジナルのひし形のドットのどちらを使うかを選択できるようになっています。

すべてのフォントが何らかの形でリミックスであることのさらなる証拠は、Monotype自身が手がける膨大な復刻、改刻、拡張されたデザインコレクションの中で見つけることができます。このコレクションには、200年前のデザインを繊細にモダン化・拡張したWalbaumや、博物館のアーカイブから救い出されアップデートされたクラシック書体Metro Novaなどが含まれています。さらに、MonotypeWlope Collectionもあり、これにはBertholde Wolpeによって制作された書体を現代の使用目的に合わせて再評価・再設計した5つのリニューアル版が収録されています。

これらのすべてが、書体の歴史は無視できないものであり、また無視すべきではないということを証明しています。クラシックなデザインの影響は、世代を超えたデザイナーたちに反映され、新たに登場する書体は、この豊かな遺産にインスピレーションを受けると同時に、そこに新たな価値を加え続けています。

「おそらくあまり語られることはないでしょうが、こしたリミックスやリバイバルが起こるたびに、それは新たな世代のタイプデザイナーやグラフィックデザイナーにインスピレーションを与えているのです」と、Neelyは語ります。「彼らはそこからいくつかの素材を取り出し、それをまとめ直して、自分自身の作品を生み出します。そうやって、このサイクルは続いていくのです。優れた書体は、その先人を敬うのです」

さらなる「Good Type」をご覧になりたい方は、ぜひPart 2「優れた書体には声がある」をチェックしてください。Adobe MAX 2017でライブ収録されたビデオです。

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優れた書体は、その先人を敬う
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